1. HOME > 学校設置反対の動きと経過 > 「開発非該当」の判断は、大津市の開発部局の職員との質疑から導出 (〜建築審査会編〜)

「開発非該当」の判断は、大津市の開発部局の職員との質疑から導出 (〜建築審査会編〜)

今回は、前回に引き続き、訴状の最大の論点である建築確認の前提となる開発行為該当性について、
議事録に記された発言を拾いながら解説を行います。

[関連]  (3)「開発非該当」の判断は、大津市の開発部局の職員との質疑から導出 (〜開発審査会編〜)

建築審査会では、「大津市開発許可の取扱基準」が引用説明されながら、いつの間にか判断基準落ち

建築審査会では、下記に示す「大津市開発許可の取扱基準」の議論が2012年3月1日に行われ、
この時点で「形の変更」の観点では「開発該当・非該当は宅造法の基準で判断すれば良い」とされました。

「大津市開発許可の取扱基準」については、建築審査会に先立って開催された大津市開発審査会では、
議事録上は一言も言及されていないことを踏まえると、審査会での本格的な議論は3月1日が初めてということになります。

まずは、「大津市開発許可の取扱基準」の「形の変更」の規定を示した上で、議事録から抜粋した具体的な
発言を示しながら、議論の経過を確認していきます。

[ 大津市開発許可の取扱基準 5-6ページ 第2章 開発行為 I 開発行為より抜粋]
 3.形(形状)の変更
  形の変更とは、切土、盛土および整地によって、土地の形状を物理的に変更することを言う。
  (1)建築物(特定工作物の建設を含む)の建築を目的として、土地を切、盛土するとき。(形体の変更)
    ただし次のような場合は、形質の変更に該当しないものとして取り扱う。

    ア 建築物等の建築自体と密接不可分な一体の工事(基礎工のための掘削など)
    イ 土砂の搬入出のない地均し程度の行為(切土または盛土高が0.5m以内)

    ウ 上記の外「通常の管理行為」として次図のような場合。
      例1 : 1m未満の単なる法面処理
      例2 : 補強
      例3 : 積み直し(ただし、現在の技術基準に適合していること)
      例4 : 造り替え

大津市開発部局の職員が質問を受けて、形の変更に対する「開発非該当の見解」を述べた発言は下記のとおりでした。

(2012年3月1日開催の大津市建築審査会議事録 4ページより転載)
 ●委員A
  その形の変更のところでアとイという言葉が出てきたと思うが、あれの範囲というのは、
  何か定義みたいなのがあるのか。

 ○開発部局の職員
  先程の開発審査会からの資料で別紙の2番目に土地の形状に該当性について書いており、アとイという分け方
  をしているが、開発行為は建築物を目的としたものである。簡単に説明すると、このアについては、建築物を
  目的とした切土、盛土の造成工事というものであり、今回の学園建設については建設を行うために建築基盤面を
  上げたり下げたり、こういう行為があれば開発行為ですよと言っている。


  それ以外のもので、スロープとか斜路とか、そういう部分に当たるが、何でもよいと判断してしまうと、土留めの
  擁壁が生じる事態になるので、このイの項目を設けている。


  建築物を目的とした造成行為以外のものであっても、この宅造の基準を満足したものでないとだめですよ
  という位置付けをしている。
今回の幸福の科学学園の申請内容は、建築を目的とした地盤を上げたり
  下げたりという行為はないが、スロープ、斜路等は若干造成が出てくる。その中でこの切土で2メートルを
  超えていない。それから、盛土は図面の中には見当たらなかったが、切り土の面積も500平米を超えていない
  という申請なので開発行為ではないと判断した。


上記発言の、青文字部分は、「ア 建築物等の建築自体と密接不可分な一体の工事(基礎工のための掘削など)」、
紫文字部分は「イ 土砂の搬入出のない地均し程度の行為(切土または盛土高が0.5m以内)」に対する説明です。

これに続く赤文字部分の説明で、「建築以外の造成行為は宅造法の基準を満足したものでないとだめですよ
という位置付けをしている」という解釈を述べ、最後の緑文字部分で、「造成行為はあるが、宅地造成法の基準で
開発行為でない」と結論付けています。

しかし、この一連の説明に対しては、1つの疑問が浮かんできます。


[疑問]
  「大津市開発許可の取扱基準」「宅地造成法」という異なる2つの判断基準の存在が説明されていながら、
  なぜ「宅地造成法」の基準だけで判断して良いとされたのか?


再度発言を読み直すと、紫文字部分の発言において、「土砂の搬入出のない地均し程度の行為(切土または盛土高
が0.5m以内)」という「大津市開発許可の取扱基準」の解釈の背景説明を行い、続く赤文字部分の発言で
「宅造法の基準を満たさないと駄目」と説明していることが分かります。

この説明からすると、建築物を目的とした工事以外の造成行為に対しては、「宅造法の基準」と「大津市開発許可の
取扱基準」という2つの基準があり、両方の基準とも満たさなければならないと解釈できますが、
実際は「宅造法の基準」のみで良いという違う結論
を説明しています。

一方で、切土・盛土高の制限が厳しい「大津市開発許可の取扱基準」を無視して良い理由についての説明がありません。
さらには、「大津市開発許可の取扱基準」には、「宅地造成法」という言葉すら掲載されていないのです。

このように考えていくと、「大津市開発許可の取扱基準」が判断基準から抜けたことは不自然と言えるでしょう。

  [建築審査会での「形の変更」の判断基準に対する説明の流れ]

解釈説明



















もっとも、この質疑が口頭で矢継ぎ早に行われたことを考慮すれば、「大津市開発許可の取扱基準」でなく、
「宅地造成法」の基準で判断して良いという解釈を疑う間もなかった可能性も否定できません。

しかし、結論としては、「形の変更」に対する開発該当性判断は「大津市開発許可の取扱基準」に示された条文での
判断ではなく、「宅地造成法」の条文の基準での判断でOKという大津市開発部局の職員の説明が、
明確な根拠を示されないままに認められた裁決となりました。

学園の工事で発生する土砂搬出は例外なく全て「建築自体と密接不可分な一体の工事」から発生?

なお、先の審議会の質疑には、下記のような続きの質疑が存在します。
そして、この中には「大津市開発許可の取扱基準」での判断が不要と解釈した根拠と思われる発言が示されていました。

(2012年3月1日開催の大津市建築審査会議事録 5ページより転載)
 ●委員B
  50センチ以下で土砂の搬出がないという開発行為の基準があるが、基礎工事に関して土砂の搬出があっても
  別に関係ないのか。

 ○大津市開発部局の職員
  別に関係ない。土砂の搬出、切り盛り造成50センチ以内と書いているのは、自分の土地を管理していく上で、
  経年ででこぼこしてくると水がたまったりするので、それをならす程度、そういうのは開発行為ではないとしている。

  それで何かに基準を置かないと、一定の基準の中で、地ならし程度というのはどの程度かということで、
  土砂出し入れのない50センチ以内ですよと言わせていただいている。
土砂を出しているという内容は、
  建築行為そのもの、建築工事である。


この質疑のポイントは、青文字部分の「大津市開発許可の取扱基準」の説明に続いて、
「今回の工事で発生している土砂搬出は問題ない」とする、言わば念押しの紫文字部分の発言が続いている点です。

この発言は、「学園の工事で発生する土砂搬出は例外なく全て「建築自体と密接不可分な一体の工事」である
と大津市開発部局が判断していたことの証拠と言えるかもしれません。


確かに、上記のように考えれば、「大津市開発許可の取扱基準」に定めた「形の変更」の観点では"ア"の条項に
該当するため、開発行為から除外可能という判断となり、残りは「宅地造成法」の基準で判断しても問題無いとできます。

しかし、本当に「学園の工事で発生する土砂搬出は例外なく全て「建築自体と密接不可分な一体の工事」なのでしょうか?

この疑問に対しては下記の3つの理由から、『「建築自体と密接不可分な一体の工事」以外の工事が発生している』
と考えざるを得ない結論になる思われます。

  ・先の質疑で、大津市開発部局の職員が「建築を目的とした地盤を上げたり下げたりという行為はないが、
   スロープ、斜路等は若干造成が出てくる。」と建築物以外の造成があることを認める発言をしていること。

  ・学園、清水建設が都市計画法施工法第60条1項の証明書の発行を申請した際に添付された計画図面では、
   宅地造成法に抵触しない旨の説明として、0.5m以上の切土が発生する区域として自ら図示していること。

  ・そもそも0.5m以上の切土が発生する区域として、駐車場など建築物から離れた地点も図示されていること。

以上のように考えると、やはり「大津市開発許可の取扱基準」に示された「イ 土砂の搬入出のない地均し程度の行為
(切土または盛土高が0.5m以内)」という基準が無視された理由は説明がつきません。

また、冒頭では「大津市開発許可の取扱基準」としての説明を行っておきながら、その後の説明で
まるで基準でないかのように説明している点も気になります。

大津市開発部局に「土砂搬出量」に対する確認の宿題を課すも、議事録上は未解決のまま裁決へ

ところで、建築審査会においては、請求人である住民の指摘を受けて土砂搬出量の確認の議論もなされました。

具体的には、申請図面以上に掘削を行っている可能性や、土砂搬出が無いとされていたポイントから
土砂を搬出している可能性に言及するものでした。具体的な答弁内容を下記に示します。

(2012年1月30日開催の大津市建築審査会議事録 4ページより転載)
 ●委員C
  50センチ以上の切り土、盛り上が行われているかどうかというのは、現地を見たらわかりますか。

 ○大津市建築審査会事務局の職員
  建築工事中なので、最終的な切り盛りの程度はわかりません。

(2012年3月1日開催の大津市建築審査会議事録 5ページより転載)
 ○開発部局の職員
  鉄塔の場合の土砂を建築とは関係なしに出すような説明をしているが、この辺で建築じゃないのに
  土砂を搬入するというような説明があった。

 ●委員D
  1.2メーターぐらいカットして、それを搬出しているという。

 ○開発部局の職員
  それはないと思っていますから、確認する。

(2012年3月1日開催の大津市建築審査会議事録 5-6ページより転載)
 ●委員E
  私もさっき○○がおっしゃったように理解していた。左のほうが、高さが、矢印の高さ約2メートル
  ぐらいあるように見える。

 ●委員F
  この右の文章でいくと、2番目の高さは2段目となっている。多分北側から撮った写真ですか。
  この部分が3段目まであったにもかかわらず、フラットになっているという。だから、道路がフラットというのは
  地盤面と一緒だと。どっちにしても50センチは超えるというと、かつ、建築工事とは関係のない土砂の搬出が
  あったというふうに。

 ●委員G
  それとは別にこの校舎の北側の鉄塔の付近に削られているような。

 ○開発部局の職員
  どちらにしても、この数字のことは、それぞれ検討します。

 ●議長
  という宿題とするというところでよろしいでしょうか。

いずれの質疑も大津市の職員が委員からの質問に対して、後で確認するという約束をして終わっています。
しかし、実際には、その後3回開催された審議会の議事録には、土砂搬出量を具体的数値を示して確認した
報告はなされていないのです。

一連の切度高、土砂搬出量に関する報告は、最終的には下記のように報告されています。

(2012年3月21日開催の大津市建築審査会議事録 4ページより転載)
 ○開発部局の職員
  次に、3月1日の公開口頭審査会の住民論述の諸資料の中で、工事への疑念ということで、建築行為以外の
  切り盛りがあるといぅようなことが出ていました。清水建設が現場に入る前の空撮した写真があるというこ
  とで聞きました。

  清水建設によれば、請求人が言われている118.4の高さの地盤はなく、URが幸福の科学に売買するに
  当たって、この土地に生えていた草や、雨などによる侵食などもあったものをきれいに清掃して小山にして
  あったため、そういうものが切り土ととられたのではないかということでした。

  それから、工事用の入りロを設けて、下に鉄板をひいて平地をつくっているのを、請求人は造成行為と
  言われているが、これはこの中で作業するのにダンプ、トラッククレーンなどの建設機械を入れていく必要が
  あるので、そういう場所をフラットにするために乗り入れを仮設で設けております。最終建築が終われば、
  必要最小限の6メートルの駐車場への入りロだけにする形になっている。


  こういう仮設工事をもって開発行為とは言っていないので、そのあたりが食い違っている。

申請者へのヒアリングと職員自らの見解を述べるに留まり、定量的に切土の高さを調べた報告は行われませんでした。

もっとも、建築審議会として切度高、土砂搬出量の確認に深く踏み込んだ確認が必要かどうかは議論の余地が残ります。

しかし、事実として「形の変更」の観点での開発該当性の判断は、このような経過の末、開発非該当の判断を伴う
裁決に至っていたという事実は確かです。

また、切度高、土砂搬出量の確認について申請人に対して確認しているが、当事者に対して確認を行うという
方法が採られましたが、客観的な審査の観点で適切だったのでしょうか?

「大津市開発許可の取扱基準」を無視した建築審査会の「開発非該当」判断は妥当だったのでしょうか?

開発審査会での形の変更に関する議論とは違い、建築審査会のでは「大津市開発許可の取扱基準」に言及した上で、
「開発非該当」判断となりました。しかしながら、その判断の妥当性について疑問を持たざるを得ません。

最後に、改めて、下記に建築審査会の開発非該当判断の根拠に対する疑問点をまとめます。

[建築審査会の進行、開発非該当判断を伴う請求棄却に対する疑問点]

・「大津市開発許可の取扱基準」と「宅地造成法」という異なる2つの判断基準の存在が説明されていながら、
 なぜ「宅地造成法」の基準だけで判断して良いとされたのか?

・学園、清水建設が都市計画法施工法第60条1項の証明書の発行を申請した際に添付された計画図面では、
 宅地造成法に抵触しない旨の説明として、0.5m以上の切土が発生する区域が図示されており、「大津市
 開発許可の取扱基準」において、形の変更に該当するのではないか?

・学園の工事で発生する土砂搬出は例外なく全て「建築自体と密接不可分な一体の工事」としていないか?
 「大津市開発許可の取扱基準」に定める「建築自体と密接不可分な一体の工事」の範囲を拡大解釈運用していないか?
 建築物の利用上の利便性に関わる部分も「用途上の一体性がある」と判断していないか?

・切度高、土砂搬出量の確認について申請人に対して確認しているが、当事者に対して確認を行うという
 方法は客観的な審査の観点で適切だったのか?

建築審査会 & 建築確認取り消し訴訟関連記事