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(2) 建築審査会は地滑りの危険性の判断には踏み込まず。議事録より明らかに。

今回は「学園建設用地の地盤安全性の疑義に対する審査経過」をテーマに議事録の検証を行います。
そもそも、学園建設用地の直隣地域に住む住民から審査請求が行われた背景には、下記のような経緯がありました。

・学園用地は、東日本大震災で大きな被害を出した「谷埋め盛り土」から成る大規模傾斜地で構成されること。

・上記の大規模傾斜地でありながら、今回の建設では地盤改良・擁壁工事などを一切行わない計画が判明したこと。

・近隣住民は安全性確保の観点から、具体的な地質分析データ等に基づく説明を学園説明会、中高層事前協議に
 係る説明会、質問状提出など様々な形で要求したものの、科学的根拠に基づく回答が避けられ続けていること。

・建築審査会という第三者機関での審理を通じて、住民が再三再四求めていた地盤安全性を確認し得る
 物的根拠となるデータの提供、及び、建築・土木の専門家による分析/判断が得られるという期待が持てたこと。

以上の背景を踏まえ、今回は審査請求人である住民が期待したレベルまで踏み込んだ審理がなされたのかという
視点で議事録の検証を行います。検証のポイントとして、下記の3つの観点を挙げて見ていくことにします。

@ 現地検証を行ったのか?
A 地滑り兆候を踏まえ、地盤を工学的に確認する調査は行われたのか? どのような結果だったのか?
B 学園用地の地盤安全性が一定の調査から導き出された証拠を持って確認されたのか? そこまで至らなかったのか?

学園用地の地盤安全性の議論では現地は訪れず。理由は『現地に行っても判断できない』

まず「学園用地の地盤安全性」の確認に際して、建築審査会として「現地検証」を実施したのかどうかを明らかにします。

結論としては、「現地検証」は建築審査会として行われませんでした。
これは「現地に行っても判断できない」という理由からでした。

下記に、建築審査会の議事録に記された具体的な発言を引用します。

(2012年1月30日開催の大津市建築審査会議事録 4ページより転載)
  ●委員
    一度現地を見に行きましたが、歩道や橋脚部分が盛り上がっているところもあり、私は地盤の専門家では
    ありませんが、現場を見た限りでは、斜面地自体の増強が必要な状態も見受けられ、現場の状況に対しての
    不安はある程度うなずけるところがありました。

(2012年1月30日開催の大津市建築審査会議事録 4ページより転載)
  ○議長
    申出書、申立書の扱いについて、まず、現地検証申出書は、建築審査会として現場を見てほしいということですが、
    意見はありませんか。

  ●委員
    現地検証申出書に証明すべき事実というのが書いてありますが、現地に行って我々が判断できるか
    どうかといところから考えたらいいと思います。

    例えば、1番の学園建設予定地が大規模な谷埋め盛り土がなされたとしても、これは別に見る必要はないと
    思います。2番は、地滑り、地崩れ等の危険があるということですが、見てもわからないかと。
    3番も地下のことなので、見てわかるような形にはなってないかと。4番についても見てわかるようなこと
    ではありませんし、5番は、審査事項から外れた内容ではないかと思いますが。
    結論的には、この証明すべき事実の観点でいうと、必要性がないと思います。

  ●委員
    50センチ以上の切り土、盛り上が行われているかどうかというのは、現地を見たらわかりますか。

  ○事務局
    建築工事中なので、最終的な切り盛りの程度はわかりません。

  ○議長
    現段階では審査会として特に現地に行かない。また、必要性があれば行くことになるかもしれませんが。
    この証明すべき事実が、現地へ行って証明できるかどうかに疑問があるということと、その事実自体、
    確認申請を判断するということを少し超えている部分がある。
    両面から、当面現地に行くということはしないということでよろしいか。

  ●委員
    「異議なし」

(2012年3月1日開催の大津市建築審査会議事録 12ページより転載)
  ●委員
    現地を見に行くというのは、再度求められたので、行かないとしたら、何か理由をつけないといけないかな
    という気もします。

  ●委員
    前も申し上げましたが、余り必要性は感じてない。結局周りと見比べて相対評価して、それが全体的に
    いいのかというのもわからないですし、ある現象を見てそれがあるということはわかるが、問題なのは、
    それが何で主張しているかということなので、それは見ても何もわからない。

  ○議長
    そうしたら、現地視察につきましては、今日の口頭審査会でかなり詳細に写真も見せていただいたということも
    ありますので、個々の委員の判断として、必要があれば個々に行っていただくということにして、審査会としては
    この事象をもって原因まで探る、探るというか考えることまで至らないということで、審査会全体としての動き
    というのは行わないということでよろしいですか。必要があれば、個々に行っていただくと。

発言より、現地検証を行わなかった理由を整理すると、下記の2点ということになります。

 ・現地で行っても請求人に指摘された事象の成否を目視だけでは判断できない。
 ・建築審査会としての審査範囲を超えている。

もっとも、建築審査会として「現地検証を行わない」という判断自体は、審査の範囲を自らの裁量で決定する観点から
問題ない結論であるといえます。

しかし、逆に、裁決を解釈する上では、「審査会は現地検証を行っていない」という事実を認識した上で、
学園用地の地盤安全性を論ずる必要がありそうです。

地滑りに関するチェックを行った結果は存在しない。結果を出すには「土質調査」を行わないといけない。

次に、請求人が指摘した地滑りの危険兆候を踏まえ、土木・建築工学的の観点で地盤を確認する調査が
行われたのかを議事録から確認していきます。

議事録によれば、大津市開発部局の職員が下記のような見解を述べています。

 ・地滑りの観点での検証結果が存在しないこと。 (赤文字部分)
 ・土質調査を行わないと地滑りの観点での判断は出来ないこと。 (青文字部分)

(2012年3月21日開催の大津市建築審査会議事録 5ページより転載)
  ○大津市開発部局の職員
   滑りの計算を今は課している。滑りというのは円弧滑りが一般的です。

   円弧の絵を横断的にかいて、これに上の土が滑る力と抵抗する力を土の性質によって計算する。
   これを円弧滑りの計算と言うが、18年の改正からは開発についてのチェックの際に課しているが、
   その法以前は課していないので、計算をしていないためその計算結果はない。

   ただ、ここ十数年の地震を見てそういう変化はないから、あるいは施工がそれ以前からの今の施工方法で
   やっておられるということがあるので、URは自信を持っておられると感じています。

(2012年3月21日開催の大津市建築審査会議事録 5ページより転載)
  ○大津市開発部局の職員
   ボーリング調査といえども、今回の10点ぐらい提出されておられるのは、あくまでも建築物が
   持つかどうかのためのボーリング調査結果で、N値を主にしている。ところが、滑りの計算をするためには、
   上の粘着力とか、内部摩擦角を調べるための土質調査をしなければなりません。


   解析もやっぱり専門家がするので、お金と時間があればできます。法以前のものについては
   さかのぼらなくていいとなっていますから、今回の改正も、それを義務化させられないというのが我々の立楊ですし、
   何も変調が出ていないのに何でする必要があるのかというのはURのお考えと思います。

この説明によれば、大津市は工学的なデータを建築審査会の段階では持ち合わせていなかったことになります。
また、実質的な調査をしなければ判断できないということも大津市は認めています。

もっとも、学園用地は平成18年の法改正以前に造成が一度終わっているため、開発非該当であれば
土質調査を行った上で検証結果を提出する義務が無いことは法手続き上は妥当でしょう。

しかし、調査結果が存在しない以上は、「URは自信を持っておられる」という職員の説明は、
「根拠無き説明」と言わざるを得ないのではないでしょうか。

また、調査結果が存在しないということは、学園用地の地盤安全性については、本来行うべき調査から得られる
物理的証拠を持って確認されるに至らなかったということも、また事実であると言えそうです。

建築審査会の結論は「学園用地に対して、地盤安全性を調査・計算により判断する領域には踏み込まない」。

では、先の大津市の開発部局職員の説明を受け、建築審査会の委員はどのような判断をしたのでしょうか?

再び、議事録より具体的な発言を引用します。下記は、地盤安全性の実質的な確認に対しては、
土質調査が必要とされたことを踏まえた議論です。

(2012年4月18日開催の大津市建築審査会議事録 9-10ページより転載)
  ●委員
   結果についてはあり得るが、現状を見てそういう不具合がないので、もう少し別な方法で見るとか、
   あるいは物性値を変えるとか、本来もう一歩何か進めて、やっていくことかなと思います。

  ●委員
   結局この数値をこの審査会として扱うかということになってくる。一からボーリングをし直して、全部データを
   とって計算をするというのが一番がっぷりよつの返し方ですね。また、一応このやり方を検証するというのが
   次の方法。

   ただ、そこまでやることの意味も一方で問われる。
   まず建築確認申請でそこまでやらない。滑りの計算は想定されていない。まずそういうデータ自体を処分庁に
   提出するということはない。こういう滑りの計算を建築確認としてするということがあり得るのか。

  ○事務局
   そのような計算を求められることはない。建物の構造の安全性については、基礎の計算も含めて、
   ある一定の規模になりますと、別の第三者の判定機関、構造計算の適合性判定機関に、その計算自体が
   妥当かどうか、審査を義務づけられますので、そのようなことは全く問題がないということになると思います。

  ●委員
   一つは、建築確認申請で滑りの計算までは問われていないので、建築審査会としても関知しないという
   返し方をする。かつ外見的に顕著な不具合は出ていないので、こういう計算をする必要性まで認めない
   という言い方ですかね。

   開発許可申請が出た場合に、こういう滑りの計算はするのか。

  ○大津市開発部局の職員
   宅造規制法の18年の改正以降はするようになった。

  ●委員
   この当時はしないということは確かだから、例えばもし今開発許可が必要で、審査するとなった場合には計算もする
   ということになるわけですね。

  ○大津市開発部局の職員
   すべてではなく、大規模なもののみです。

  ●委員
   当該敷地で開発許可申請が出た場合は計算するのか。

  ○開発調整課
   かかってきますね。

  ●委員
   そうすると、開発許可申請が出たらチェックすることになっているわけですね。
   確認申請としたらそもそもそれは問われていないと返せるが、開発許可申請と同等にとらえるとかかわってくる。
   こういう数値を出されているので、どう答えるかということですね。

  ●委員
   建築審査会としては建築確認について判断するので、そもそも建築確認の段階で判断しないことについて、
   建築確認が不適だと判断できないとは思います。そもそもその滑り計算とかがけ崩れの危険性とかのことは
   開発行為だとなって、開発許可をするかどうかというところの判断の話だと思う。
   今回の場合は、開発行為にも当たらないので、そこまで踏み込むことはできない、必要ないと思う。

(2012年4月18日開催の大津市建築審査会議事録 10-11ページより転載)
  ●委員
   これへの具体的な対応とすると、本格的に最初から計算するというのが実質的には非常に難しい。
   時間的に見ても、ボーリングから始めると多分1年仕事になる。まず本格的にその辺のデータを、
   ボーリングをし直して、予算的な問題も含めて、ということは時間的にも予算的にもこの審査会で
   行うというのは無理がある。そうしたときにこの数値をどう評価するか。

  ●委員
   守備範囲の話になってこざるを得ないと思う。
   後は例えば訴訟なり何なりで、請求人の方は別の場でされることかなと。
   ここはここの守備範囲が一応あると思う。

   例えば危険だということで、建築確認を取り消すと判断したとしたち、処分庁としてはそこまで
   判断するべきものという判断をしていることになる。

  ●委員
   どうですか、多分手続的にはまずそういう問題がないということになる。建築確認の取り消しには
   至らないと思うが、例えば付言で、どこかで確認してくださいと書くようなことはあるかもしれない。

   これに対して具体的に審査会でなくても、例えば大津市で何かこれにかわるような計算が出せるのかどうか。
   あるいはURとかになってくるのかと思うが。

  ○大津市開発部局の職員
   先ほど言いましたように、この試験というのは、条件によって試験方法も違う、出し方が違う、
   計算式もひょっとしたら排水、地下水があるかないかによってやり方も違う。

   今回出された試験がこの安定計算に出すべき方法で出した数値ではないと聞いているので、今回出された
   計算結果はデータが違いますよということは調べられるかもしれませんが、改めてこの場所が安定計算で
   大丈夫ですよということについては時間がかかり過ぎる。それはまた試験を現地でしないとできない。
   この式が、このやり方が合っているかどうかという判定しかできない。

  ●委員
   やり方が間違っているということか。

  ○大津市開発部局の職員
   このデータの出し方が、今回安定計算に要る出し方ではないと聞いている。試験方法が違う。

  ●委員
   恣意的に持ってきた数値ではないとしても、その数値は、本来この計算に使うような段取りで
   検査された数値ではなかった。

  ○大津市開発部局の職員
   そうです。

  ●委員
   としたときに、この安全ではないという数値自体は否定できないのではないかと思う。
   間違っているのではなく、不十分であるということですよね。それ自体否定できない、
   本来すべきことをやらない限りは、間違っていると言えないのではないかということですよ。

  ○大津市開発部局の職員
   出すべき試験方法で出た数字ではないと聞いているので。この試験方法でも、水を排除しないでやる方法と、
   水を排除してもいい方法とがあって、今回の日的に合った試験かどうかが定められている。
   それが定められた試験方法で出された数値とは違うのなら、この数字は間違っているということが言える。
   ただ、安全かどうかというのは言い切れないです。

  ●委員
   そこへ持っていくと、私のところで判断すべきところでないことが論点になる。
   私どもが、そのエリアではないという返し方というのも考えたほうがいいと個人的には思う。
   安全性の数字の論議になってしまう。

  ●委員
   それと、基本的にはまず手続法的には問題がない。法律上出されても、建築審査会として、
   あるいは処分庁含めてですけども、それを確認すべきとはなっていないし、その能力もない、
   あるいは材料も持っていない。この計算足り得る素材がない、そのデータがないということですね。

  ●委員
   この数値を判断するに至らないということですね。

  ●委員
   その段階で後はそれ以上もう言わないということですね。0.8だろうが、0.3だろうが、
   それについては特に評価をしない。

  ●委員
   その実態、今の現実の姿を見たときに、というのを入れるというのはいいかどうかわかりませんが、
   そんなところで別にそこを判断するということにはならない形で。

  ●議長
   この滑りの計算値についてはそういう対応でいかがでしょうか。これを直接的に評価するということではなく、
   もう我々の領域を超えているということでよろしいですか。
外見的にという意味に係るかと思うが、
   あの土地自体も阪神・淡路大震災のときに中規模程度の地震を一応経験している土地ではあり、
   この段階で崩れていないというのも少し安全性の根拠にはなろうかと思います。

(2012年5月30日開催の大津市建築審査会議事録 5ページより転載)
  ●委員
   これについては、建築基準法がこれを求めているわけではないというのが一番大きな点です。
   だから、例え本当に危険だとしても、建築基準法上の確認を取り消すことにはならないと思うのが1点。

   それをそういう意味で確認するためには、全部ボーリングから調べ直して計算し直さないといけないと
   いうことがあり、時間と、能力と費用を考えると、この建築審査会はその能力を有しないとは思う。

注目は、赤文字で示した発言でしょう。

引用部の最後で、議長は建築審査会での審査の範囲を超えているということを明言しています。
また一方で、法手続き的には、開発該当の場合には地滑り関する土質調査が必要という確認を取っています。

今回の審査会では、このような議論経過の末、結論としては「実質的な学園用地の安全確認が行われる」という
請求人の期待に応えた判断ではありません。

しかし、それは、建築審査会としての審査権限の観点からは仕方がないのかもしれません。

なお、建築審査会の裁決が下った現在、滋賀県大津市と仰木の里学区自治連合会の間で地盤安全性の
検証については、住民指定の専門家を交えた協議会が大津市長同意のもと継続されています。

この経緯からも、大津市は実質的な地盤安全性の議論を「未だ解決を見ぬ問題」として協議に応じていると思われます。

住民指定の専門家と大津市との協議会に求められるのは、実質的な地盤安全性の検証

建築審査会での議論では、請求人提出の地盤安全性を検証した結果について、下記のような評価がなされました。

(2012年5月30日開催の大津市建築審査会議事録 5ページより転載)
  ●委員
   非常に難しい話だと思いますが、まず計算方法が一般的に、長期に経った後用いる方法ではない
   方法が用いられているということが1点。

   それから、調査方法がこの安全計算に用いられるための調査方法でないものであるということ。
   これは地盤の支持耐力を求めるために行ったボーリングの結果を引用しているということで、本来地盤の滑りを
   目的とした場合は違う調査方法を用いるべきであると宅地マニュアルで指定されているということです。

   3点目は、そういう地盤支持耐力を見るためのもので、滑りのための調査になっていないことから、
   0.8という結果が出ているけれども、それをもってこの宅地が安全でない、危険であるというふうに
   判断できないという意味も含んだ説明かと思います。

   前回の審査会で少し議論になったところですが、そこを補足的に開発調整課からしていただいたということです。

   安定であるという反証をするデータは持ち合わせていないわけですけれども、
   これをもって安定じゃないと断定するには至らないということですよね。

要約すると、「定められた調査方法と異なるため、適切な検証結果でない」とされたのです。

しかし、この見解は、請求人と建築審査会の間では相違があるようです。

請求人は、学園用地の地権者でないため、該当地での測量・ボーリング調査を行うことが出来ません。
そのため、検証に際しては、清水建設が審査機関に提出した調査結果を入手し、地盤安全性の検証を行ったのです。

しかし、この検証の元データは、工事主である清水建設が調査・作成した訳ですから、建築審査会が指摘した
「定められた調査方法」に掛けられる条件の揃ったデータが必ずしも得られた訳では無いようです。

そのため、直隣区画などの周辺の土地データも含めて収集し、分析検証を行ったところ、学園用地に対しても
地盤の安全性が疑われる示唆が結果として得られたため、審査請求において問題提起していたのです。

また、請求人である住民は、住民の費用負担で大津市の周辺地のボーリング調査の申し入れをしていましたが、
大津市と合意に至らず、ボーリング調査は行われないまま建築審査会を迎えました。

このような経緯を踏まえると、「定められた調査方法」を実行する機会が与えられない一方で、
「定められた調査方法」で調査していないことを理由に「正しい結果とは言えない」という判断を下した事実は、
今後の住民と専門家協議の過程において、軽視されてはならない出来事なのかもしれません。

新聞報道への疑問。結論は、「開発非該当判断」も「地盤安全性の疑義には踏み込まず」のはずが・・・。

このように議事録を見てくると、土質調査を伴う地盤安全性の確認は、審査権限を越えた範囲の議論ということで、
建築審査会で積み残した議題であることが明確になったのではないでしょうか。

また、請求棄却の際に示された「開発非該当」の判断は、「地盤安全性の観点から導かれたものでない」ことも、
議事録より明らかになりました。

次回以降は、「開発非該当」という判断がどのような議論の末に下されたのかという観点での解説を行います。

なお、地盤安全性への判断について、興味深い動きが判明したため、本記事の結びとして紹介します。

現在、幸福の科学学園・関西校の学校設置審査を行っている滋賀県・私学審議会に対して、滋賀県総務部総務課は、
下記の新聞記事を委員全員に配布することで、「地盤の安全性は証明された」という説明を行ったようです。

(2012年6月2日 朝日新聞朝刊 滋賀版より引用)
住民側の請求棄却 「幸福の科学学園」大津市建築審査会

学校法人「幸福の科学学園」(栃木県那須町)が大津市の仰木の里地区で建設中の中高一貫校について、
地元住民らが建築確認の取り消しを求めていた問題で、市建築審査会は1日までに住民側の請求を棄却した。

住民側は、大規模地震の際に建設予定地での地滑りが起きる可能性があるとして、「建築確認ではなく
地盤調査を伴う開発許可を得るべきだ」と主張していた。審査会は「地盤の強度が建築基準法の基準を
満たしていることは工学的に確認されており、建築確認は適法だ」と結論付けた。
ここで問題提起したいことは、上記新聞記事の赤文字部分の解釈についてです。

建築審査会として「地盤安全性の判断に踏み込まない」という方向性が議事録上の発言として残り、
結論付けられている状態は、上記新聞記事の結びの表現と一致すると言えるのでしょうか?

また、その新聞記事を持って、委員に「地盤の安全性は証明された」と説明するという方法は妥当なのでしょうか?

審査を行った当事者が議事録上で詳細な調査が必要と言っている以上は、「地盤の安全性は証明された」という
説明を行ったとするならば、裁決を拡大解釈しすぎていないでしょうか?

2012年9月に入り、私学審議会が開催され、学校設置に向けた審査が進むことが予想されますが、
正しい情報に基づく公正な審理が行われているかどうか、注目していく必要がありそうです。

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