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問題点D: 地盤不安は実質議論せず。訴訟文書の解釈は事務局が都合よく説明。

「認可を適当と認める」とした審議会では裁判文書、検査済書のみを確認

「認可を適当と認める」とした2013年2月6日の私学審議会では、建築確認の取消しを求めて
係争中の事案に関連する下記の文書が抽出され、委員に提供されました。

[2013年2月の私学審議会に提供された建築関連文書一覧]
文書名
大津市建築審査会裁決書 
 (↑2013年3月現在、不服として大津地裁で有効性を係争中)
建築確認処分執行停止申立事件判決文 ※H25.2.6提出
 (↑2013年3月現在、大津地裁で本審理継続中)
検査済証(建築基準法)※H25.2.6提出
 (↑建築計画の変更前の建築確認に対応する検査済書との原告主張で、現在無効を係争中)
消防用設備検査済証(消防法) ※H25.2.6提出
学園の建築確認取り消し訴訟に関しては、これまで当ホームページでも取り上げてきましたが、
大きな論点は下記の2点でした。

・学園用地の地盤安全性に疑義があり、科学的根拠に基づく証明は未だなされていないこと。
・法手続きを通じた安全確認が、誤った「開発非該当」判断により未実施の疑いがあること。

この論点については、これまで大津市建築審査会、大津地裁で争われてきましたが、
係争中に建築物が完成したことにより、私学審議会で裁判中の校舎・寄宿舎を含む学校
設備の審査を行わざるを得ない状況になりました。

議事録によれば、事務局は大津市建築審査会、大津地裁の資料を私学審議会に提出しましたが、
一方で、私学審議会の大津地裁で実質的な違法性が示唆されるような決定文が出ていながら、
正しい解釈とは言えない説明を委員に行い、委員がその内容に追従する結果となりました。

「執行停止ならず」=「地盤は安全」という判断は誤り

私学審議会に対する地盤安全性の説明については、大津地裁の執行停止に関する
判断文を引用し、下記のような説明がなされました。

[2013年2月6日の私学審議会議事録20ページ(pdf 20ページ)より引用]
 事務局 : 各事情を踏まえて考えると、申立人らが提出する専門家の意見書をもって、大規模な
       地すべり発生の具体的な危険性があるとの点につき疎明」、すなわち確からしい
       心象を抱かせるほどの証拠の提示がないということでございます。

[2013年2月6日の私学審議会議事録20ページ(pdf 20ページ)より引用]
 事務局 : 執行停止につきましては、53ページにも書かれておりますが、重大な損害を避ける
       ための緊急な必要があるということはできない、ということをもって、建築確認処分の
       執行停止については却下という判断をされておるところから、裁決およびその判決の
       内容を勘案したところ、地盤の安全性については、行政法規上も確保されている
       と判断されているところでございます。

この事務局の説明で誤っていたのは「地盤の安全性については、行政法規上も確保されている
と判断されている」、つまり「裁判所が安全であると判断した」と委員に説明した点です


大津地裁は、執行停止の要件である「建築確認処分の効力を停止すべき緊急の必要がある」
という法文の解釈として、本件では「大規模な地すべりが発生する具体的なおそれ」が必要で
あるとし、原告に対してその証明(疎明)を要求し、それが不十分であるとして、執行停止を
認めませんでした。

つまり、「大規模な地すべり」が起こらないと決めつけたわけではありませんし、
小規模な地すべりについては、起こるか起こらないかすら判断されていないわけです。

「大規模な地すべり」が「ほぼ起こります」と言えなければ「具体的なおそれ」がある
とはいえないとの前提の元に、そのようなことは原告が提出した資料だけでは判断できません
といったに過ぎない
のです。

このことからすれば、この判断を根拠に「地盤ないし校舎の安全が確認された」などと
言えないことは、火を見るよりも明らかなことです。

地盤の安全については、今まで一度たりとも、「調査」によって確認されたことはありません。
住民が周辺地域の地質調査を自費で行いたいという要望も聞き入れられませんでした。

旧公団の開発による土地だから調査は不要だとの枠組みの元に、一貫して
具体的な安全性調査がされてこなかったことは、決して外してはいけない事実でしょう。

さらには、学園用地の地盤状況を分析し、住民からの提供された資料は事務局である総務課が
全て握りつぶしていた状況では、私学審議委員の解釈を確かめる場も失われ、大津市が地盤を
担保したという他責でしか判断できないというのも無理はありません。

「執行停止ならず」=「地盤は安全」という説明は、大きな問題点があったと言わざるを得ません。

大津地裁は本審理で開発該当性を判断予定も、事務局は開発非該当と説明

もう一点、注目すべきは学園用地の開発該当性に関する説明でしょう。開発該当性に関する
見解として、事務局は大津市建築審査会の裁決文だけを引用し、下記のように述べています。

[2013年2月6日の私学審議会議事録20ページ(pdf 20ページ)より引用]
 事務局 : 棄却内容としましては、処分庁、今回、指定検査機関となりました●●(建築確認機関)
       のなした建築確認に違法性はなく、請求に理由がなしということでございます。
       (中略)
       判決の内容の方を見ていただきたいと思うんですが、まず開発許可の必要性に
       ついてのお話でございますけれども、
       (中略)
       上から7行目、「本件建築計画について開発許可は要しないと解する」と。
       要は、●●(建築確認機関)の判断は妥当なものであると、手続きは妥当である
       ということで、建築計画については開発許可は要しないという形で出ております。

しかしながら、執行停止の判断に関する決定文の中心は「開発非該当の判断が違法である
可能性がある。本案でしっかり検討せよ」という内容でした。つまり、開発非該当だけを
強調した間逆の説明が行われたのです。

一方で、大津市建築審査会の裁決において、最大切土高の評価が「1.8m」とされた判断が、
大津地裁の執行停止に関する決定文で「少なくとも1.93m」と覆り、法基準上の開発該当の
可能性を残していたことは、述べられませんでした。

大津市の建築関連部局が深く関わって棄却した建築審査会での裁決の重要根拠が
既に覆っている事実は、大津市建築審査会の裁決文の信憑性を揺るがすものであり、
重く受け止めるべきだったでしょう。

[関連コンテンツ]
大津地裁での執行停止判断ならずも、
建築計画に対して開発行為該当による実質的な違法性を示唆
 (北まちネットHP)

さらには、大津市の工事現場への立ち入り検査の結果、「都市計画法違反の疑い」に繋がる
工事が存在し、この執行停止の判断の後に、行政文書まで出ていたことも明らかになっています。

[関連コンテンツ]
「都市計画法違反の疑いあり」と大津市が指摘も、行政指導を無視して工事完了検査済書を発行
(北まちネットHP)

都市計画法への違反となれば、開発の取り直しとなりますが、これにより安全性が、
はじめてきちんと確認される、それまでは、確認されないままである、ということです。

現在も大津地裁での本審理が続きますが、掘削切土幅については「あと7cm」で開発該当です。
また、大津市は立ち入りの結果、建築物の施工位置が3cmずれていることも認めており、
法基準による切土高で開発該当へと評価が覆る可能性は、もはや無いとは言い切れません。

大津市の判断に追従するという「他責」での判断の是非が今後問われることになるでしょう。

[関連コンテンツ]
建築確認の取消しを求める訴状の徹底解説 審査請求棄却の経緯を議事録から詳細解説