切土2mを超える地点が学園建設の申請図面に存在。宅造法の基準でも開発該当!!
幸福の科学学園の校舎棟・寄宿舎棟に対する建築確認取り消しを求めた訴状は、
『形質の変更』と呼ばれる観点での開発該当性に対して、深く切り込んだ内容が争点とされています。
以前の記事では、下記2つの見解を示しました。
・『形質の変更』を定めた「大津市開発許可の取扱基準」の基準によれば「開発該当」と思われること。
訴状で主張された『形質の変更』の解釈は? 学園建築確認に対する開発該当性の検討(1)
・仮に「宅地造成等規制法施行令」での判断を妥当とした場合であっても、改変面積が
500uを超える可能性として、計画図面に示されながら面積に算入されていない勾配地が
存在しており、正しく面積算出すると「開発該当」と思われること。
訴状で主張された『形質の変更』の解釈は? 学園建築確認に対する開発該当性の検討(2)
今回は、学園建設の申請図面に焦点を当て、宅造法の基準を超える切土工事の存在を検証します。
校舎棟の最大切土高は1.8mで建築申請。しかし、、
幸福の科学学園の校舎棟、寄宿舎棟に対しては、大津市は宅造法の基準を用いて、
下記のように「開発非該当」と判断していました。
[ 大都開第43号 審査請求に伴う開発許可不要の見解について(回答) 2ページより抜粋]
宅地造成等規制法施行令
第三条 法第二条第二号 の政令で定める土地の形質の変更は、次に掲げるものとする。
しかし、建築確認取り消しを求める訴訟においては、第2回口頭審理に提出された資料において、
校舎棟に対しては切土が2mを超えることが建築確認申請図面のみで立証できると原告より主張されたのです。
下記のように「開発非該当」と判断していました。
[ 大都開第43号 審査請求に伴う開発許可不要の見解について(回答) 2ページより抜粋]
2 土地の形状の変更の該当性
本件に関する都市計画法施行規則第60条の規定に基づく証明書の申請図書によると、
宅地造成等規正法の同法施行令第3条で規定される宅地造成には該当していない。
申請図書による切土又は盛土は、下記のとおりである。
(学校用地)
最大切土高さ h=1.80m
盛土 該当なし
切土又は盛土の面積 A=423.53u
(寄宿舎用地)
最大切土高さ h=0.92m
盛土 該当なし
切土又は盛土の面積 A=341.17u
本件に関する都市計画法施行規則第60条の規定に基づく証明書の申請図書によると、
宅地造成等規正法の同法施行令第3条で規定される宅地造成には該当していない。
申請図書による切土又は盛土は、下記のとおりである。
(学校用地)
最大切土高さ h=1.80m
盛土 該当なし
切土又は盛土の面積 A=423.53u
(寄宿舎用地)
最大切土高さ h=0.92m
盛土 該当なし
切土又は盛土の面積 A=341.17u
宅地造成等規制法施行令
第三条 法第二条第二号 の政令で定める土地の形質の変更は、次に掲げるものとする。
条文 |
---|
一 切土であって、当該切土をした土地の部分に高さが二メートルを超える崖を生ずることとなるもの |
二 盛土であって、当該盛土をした土地の部分に高さが一メートルを超える崖を生ずることとなるもの |
三 切土と盛土とを同時にする場合における盛土であって、当該盛土をした土地の部分に高さが 一メートル以下の崖を生じ、かつ、当該切土及び盛土をした土地の部分に高さが二メートルを 超える崖を生ずることとなるもの |
四 前三号のいずれにも該当しない切土又は盛土であって、 当該切土又は盛土をする土地の面積が五百平方メートルを超えるもの |
校舎棟に対しては切土が2mを超えることが建築確認申請図面のみで立証できると原告より主張されたのです。
建築図面の最大切土の評価は、測定地点・測定断面ともに不適切の疑い。
裁判所に提出された書面によれば、最大切土の測定地点、評価断面がそれぞれ正しくなく、適切な地点で評価すると
「形の変更」の法基準で「開発該当」となる最大切土2mを超える切度が発生していると原告は主張しています。
下表において、校舎棟の最大切土地点に関する主張を比較します。
[測定地点について]
校舎棟の建築申請図面では、元々の土地の法面(斜面)を掘り、掘った斜面を利用して階段を設置する
計画になっており、この地点が最大切土を発生する箇所とされていました。
この最大切土高さを評価した校舎棟北側の階段中央の地点は、建築申請図面ではD-D断面として抽出されています。
しかしながら、原告主張によれば、D-D断面よりも切土幅が更に大きい地点が階段のすぐ脇に存在するというのです。
裁判所に提出された甲51号証では、この地点の断面はD1断面、D2断面としてそれぞれ示されていますが、
この階段のすぐ脇の部分は、建築申請図面では床面がフラットなスペースであり、階段を含む断面で切土高を
測定した場合に比べて、階段の分だけ切土の幅が大きくなるというのです。
(クリックすると図面が大きく表示されます)
(クリックすると図面が大きく表示されます)
これの主張が認められれば、建築確認に添付された60条証明の最大切土の評価が覆り、
最大切土が発生する正しい断面での再判断が必要ということになります。
[測定断面について]
校舎棟北側の階段は建築申請図面では、1.8mとした切土の測定断面は屋根の先端から始まっています。
しかし、切土を測定すべき断面は、屋根の先端部分から校舎棟の壁面まで奥に後退した地点であるべきです。
実際に、申請図面として提出された「土地利用計画図」と「造成計画平面図」を比較すると、
「土地利用計画図」で屋根下とされたエリアに対して、「造成計画平面図」では切土面積として
カウントされており(図中の紫の枠内)、「建物の壁面」を境界として判断することについては争いが無いと言えるでしょう。
[左図 :: 土地利用計画図(校舎棟)] [右図 :: 造成計画平面図(校舎棟)]
(図をクリックすると、別ウインドウで拡大図が表示されます)
では、切土を測定すべき断面が、屋根の先端部分から校舎棟の壁面まで奥に後退した地点であるとして
切土の高さを図示すると、青点線と黄緑点線のように、明らかな差異が発生していることがわかるのです。
(クリックすると図面が大きく表示されます)
(クリックすると図面が大きく表示されます)
建築申請で提出された図面の縮尺に基づき、改めて最大切土が発生している測定地点、及び、評価断面で
再評価すると、切土高さは「2.4m」となり、たとえ開発該当判断基準が宅造法の「形の変更」での評価で
妥当であったとしても、「開発該当」となるのです。
「形の変更」の法基準で「開発該当」となる最大切土2mを超える切度が発生していると原告は主張しています。
下表において、校舎棟の最大切土地点に関する主張を比較します。
観点 | 建築確認の申請図面 | 原告主張 |
---|---|---|
測定地点について | 階段を含む地点 | 階段脇の切土断面が覆われていない地点 |
測定断面について | 校舎棟の屋根の先端部からの垂直面 (図中紫点線) |
校舎棟の壁面 (図中赤点線) |
切土高さ | 1.8メートル(宅造法で開発非該当) (図中黄緑点線) |
2.4メートル(宅造法でも開発該当) (図中青点線) |
校舎棟の建築申請図面では、元々の土地の法面(斜面)を掘り、掘った斜面を利用して階段を設置する
計画になっており、この地点が最大切土を発生する箇所とされていました。
この最大切土高さを評価した校舎棟北側の階段中央の地点は、建築申請図面ではD-D断面として抽出されています。
しかしながら、原告主張によれば、D-D断面よりも切土幅が更に大きい地点が階段のすぐ脇に存在するというのです。
裁判所に提出された甲51号証では、この地点の断面はD1断面、D2断面としてそれぞれ示されていますが、
この階段のすぐ脇の部分は、建築申請図面では床面がフラットなスペースであり、階段を含む断面で切土高を
測定した場合に比べて、階段の分だけ切土の幅が大きくなるというのです。
(クリックすると図面が大きく表示されます)
(クリックすると図面が大きく表示されます)
これの主張が認められれば、建築確認に添付された60条証明の最大切土の評価が覆り、
最大切土が発生する正しい断面での再判断が必要ということになります。
[測定断面について]
校舎棟北側の階段は建築申請図面では、1.8mとした切土の測定断面は屋根の先端から始まっています。
しかし、切土を測定すべき断面は、屋根の先端部分から校舎棟の壁面まで奥に後退した地点であるべきです。
実際に、申請図面として提出された「土地利用計画図」と「造成計画平面図」を比較すると、
「土地利用計画図」で屋根下とされたエリアに対して、「造成計画平面図」では切土面積として
カウントされており(図中の紫の枠内)、「建物の壁面」を境界として判断することについては争いが無いと言えるでしょう。
[左図 :: 土地利用計画図(校舎棟)] [右図 :: 造成計画平面図(校舎棟)]
(図をクリックすると、別ウインドウで拡大図が表示されます)
では、切土を測定すべき断面が、屋根の先端部分から校舎棟の壁面まで奥に後退した地点であるとして
切土の高さを図示すると、青点線と黄緑点線のように、明らかな差異が発生していることがわかるのです。
(クリックすると図面が大きく表示されます)
(クリックすると図面が大きく表示されます)
建築申請で提出された図面の縮尺に基づき、改めて最大切土が発生している測定地点、及び、評価断面で
再評価すると、切土高さは「2.4m」となり、たとえ開発該当判断基準が宅造法の「形の変更」での評価で
妥当であったとしても、「開発該当」となるのです。
芦屋マンションの建築確認取消の判例では基準を10cm超えただけでも厳格にアウト。今回の判断は?
ところで、宅造法の基準を若干超えただけの申請は、本当に開発該当と判定されるのでしょうか?
この疑問に対しては、芦屋マンションの建築確認取消の判例が明確な答えを示しています。
[関連コンテンツ]
(芦屋マンションの建築確認取消 http://www.kobe-np.co.jp/news_now/news2-621.html からの引用)
建築確認申請に添えられた図面によると、建物は地上三階地下一階。平均地盤面から高さは制限内の
九・九八メートルとしていた。これに対し、住民らは「一階部分に必要のない壁を設けるなどして地下として扱い、
地盤面をかさ上げしている。実態は高さ十二メートルで規定違反に当たる」と市建築審査会に審査を請求。
建築確認の取り消しを求めた。
裁決で住民の主張はすべては認められなかったが、建物の一部で地盤面の設定に誤りがあると指摘。
一階を地盤面とするには、地下とされる部分の前面と両側面が土の壁で囲まれていなければならないが、
計画では側面の一方に壁が設けられていなかったため、地下を地盤面と判断。
平均地盤から算定すると一部の建物が十メートルを数十センチ超える法令違反になるとした。
これは、高さ基準が10メートル以下と定められた地区に対して、建築申請図面において10メートルを10cm超えた
計画という判断が下り、この10cmにより、結果、建築確認が取り消された事例です。
この判例は、法令で定められた基準に対して、建築確認申請図面上で基準を上回っていることを
事実立証できれば、裁判所は建築確認を取り消し得るということを物語っています。
今回示された申請図面上でのみ立証できる2mを超える切土の存在は、学園に対する建築確認を取り消し
得るのでしょうか?今後の公判に注目が集まります。
この疑問に対しては、芦屋マンションの建築確認取消の判例が明確な答えを示しています。
[関連コンテンツ]
(芦屋マンションの建築確認取消 http://www.kobe-np.co.jp/news_now/news2-621.html からの引用)
建築確認申請に添えられた図面によると、建物は地上三階地下一階。平均地盤面から高さは制限内の
九・九八メートルとしていた。これに対し、住民らは「一階部分に必要のない壁を設けるなどして地下として扱い、
地盤面をかさ上げしている。実態は高さ十二メートルで規定違反に当たる」と市建築審査会に審査を請求。
建築確認の取り消しを求めた。
裁決で住民の主張はすべては認められなかったが、建物の一部で地盤面の設定に誤りがあると指摘。
一階を地盤面とするには、地下とされる部分の前面と両側面が土の壁で囲まれていなければならないが、
計画では側面の一方に壁が設けられていなかったため、地下を地盤面と判断。
平均地盤から算定すると一部の建物が十メートルを数十センチ超える法令違反になるとした。
これは、高さ基準が10メートル以下と定められた地区に対して、建築申請図面において10メートルを10cm超えた
計画という判断が下り、この10cmにより、結果、建築確認が取り消された事例です。
この判例は、法令で定められた基準に対して、建築確認申請図面上で基準を上回っていることを
事実立証できれば、裁判所は建築確認を取り消し得るということを物語っています。
今回示された申請図面上でのみ立証できる2mを超える切土の存在は、学園に対する建築確認を取り消し
得るのでしょうか?今後の公判に注目が集まります。